この手でキミを温めさせて【短編】

「なぁ、タツ兄!これ絶対タツ兄のじゃないだろ?」


「お、珍しく鋭いな」



食後のコーヒーを用意しているタツ兄が、意味深な笑みを浮かべながら言う。



「昨日小動物みたいな可愛い女の子から冬瑚に渡してくれって頼まれたんだよ。
…あ、これもそうだ。忘れてた」



そう言ってカウンター越しに渡されたのは…


昨日俺がマミに貸したニット帽。



「えっ──!?」


「『本当は洗って返したかったんだけど、今日も滑るなら無いと困るだろうから』って。
冬瑚にそんな気遣わなくていいのに…いい子だな、あの子」



じゃあ、まさかこのチョコレートも……

マミが俺にくれるために用意してたのか?


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