私の鬼畜な天使様
瞬間、強い力に背中が打ちつけられ息が出来なくなっていた。

『く、っ!』

馬乗りになった男が私の首根っこを締め上げているのに気付く事数秒、酸素が足りないせいか頭がくらくらする。

『てめー…人間の分際で天使様をひっぱたくなんてどういう了見だ。ああ?』

そんな凶悪な天使なんかいるもんか。

『謝れ』

ふるふると首を振る。苦しいけど絶対いやだ。こんな奴に謝ってたまるか…私だって意地がある。例えちっぽけでつまらないものだとしても。

『強情な女だな…可愛くねぇ』

呆れた様子を見せるも締められた指が緩められる様子は微塵もなかった。男はさほど怒っているわけではなさそうだ。けれど人ひとりの命なんかなんとも思っていないだろう。

だって私を見る視線が。

男にとって人間とはそこらの小さな虫と同じなんだ。だけどそれでも抵抗しているのは何故?
いよいよ意識が途切れそうになったにも関わらず私はつい笑ってしまった。

天使に殺されて死亡。

平凡女子にしては上出来なんじゃない?

『てめー…』

ナル天使が大きく目を見開いた。

刹那、

『フェイト様!いい加減にして下さい!貴方様がそんなだから堕天崖っぷちなんですよ!』

凛とした声が辺りに響き、そこにいたのは。

すごくおっきな真っ黒な…犬?だった。


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