カリソメオトメ
 あたしを強引に抱いた後、奴は逃げるように消えた。強引に抱いたくせに、あたしの中には出さなかった。少なくともそれは、奴があたしをそれだけ大切に思っていてくれたという意味に思えた。

 ただあたしは自分を酷く嫌悪していた。あいつだけだと思っていたのに、奴の目を見ていて拒否できなくなった。
 やはりあたしはフェイクで腐れプッシーなのだと思った。

 ただひとつだけはっきりしたのは、奴に抱かれてもあたしは気持ちがいいとは思わなかったってこと。むしろ心も身体も痛かった。あいつに出逢ってからずっとやめていたのに、久しぶりに手首を切りたくなった。
 それから奴は店に姿を見せなくなった。一ヶ月ほど過ぎた頃、街中で同じ歳くらいの女と歩いているのを見て少しだけ安心した。

 あたしは間違いを繰り返して生きている。でも一つだけ分かっているのは、そうやって間違いを繰り返しながら、自分のオリジナルを探すしかないということ。

 あたしは奴に抱かれたことを間違いだと思っている。けれど、あいつはそれをどう思ってくれるだろうか。
 何となく、それでも何も言わずに頭を撫でてくれるように思った。

「いらっしゃいませ」
 それからも毎日、あたしは古着屋でバイトをしている。自分のオリジナルがどういうモノなのかそれは分からないけれど、あたしはあたしとして真っ直ぐに歩いていくしかない。
 あたしは背中にカルマを背負っている。でもそれがきっとあたしをオリジナルにしてくれると信じている。
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