カリソメオトメ
12
あたしの髪を誰かが撫ぜている。うっすらと残っている意識がそれに気付いたけど、その心地よい歌声はあたしを更に深い眠りへと誘う。
こんなに穏やかな気持ちで、こんなにゆっくりと眠るのはいつぶりなのだろう。きっと初めてではないだろうか。
呆然とした意識は、あたしを撫ぜるその手の持ち主が誰なのかを漠然と考えていた。最初に母の顔が浮かんだ。次にパパの顔。でもあたしはその二人ではないことにすぐ気付いた。
あたしはうっすらと目を開けて、視線を手の主に向けた。そこにはひとりの男性が、優しい目であたしを見詰めていた。
あたしは彼を見て、ふっと身体から全ての力が抜けてしまった。ああ、なんてあたたかくて、なんて優しい手だろう。あたしのショートボブの髪なんて撫ぜても、きっと気持ちよくなんかないはずなのに。
うっすらと開いた目で見た彼は、とても幸せそうだった。何かを手に入れた、そんな風に見えてしまった。
ああ、なんて幸せなんだろう。
こんなに大切にされることがあるなんて、嘘みたいだ。
その時、あたしの耳に掠れた歌声が届いた。それは間違いなく彼の声だ。小さな、本当に呟くような歌声だけど、それは心地よい振動となって心に響く。
大切なものを守ること、大切なことはただ、生きていくということ、泣いてしまってもいいということ、消えてしまった彼女が遺した想いと言葉、それを受け止めてそれでも愛している、そんな歌だった。
彼があたしに伝えてくれた、「どんな悪意からも守る」という決意、決意という名の愛の告白。それはあたしに届いた瞬間、あたしを包み込んでくれた。
ああ、そうだ、そうなんだ、このひとは、アキラだ。あたしを求めてくれた、あたしが大好きなひとだ。
彼の歌声が心地よくて、あたしは漣のような安らぎの中、また深い眠りに誘われる。髪を撫ぜてくれる優しい手のあたたかさは、ただあたしを全ての悪意から、守ろうとしてくれていた。
こんなに穏やかな気持ちで、こんなにゆっくりと眠るのはいつぶりなのだろう。きっと初めてではないだろうか。
呆然とした意識は、あたしを撫ぜるその手の持ち主が誰なのかを漠然と考えていた。最初に母の顔が浮かんだ。次にパパの顔。でもあたしはその二人ではないことにすぐ気付いた。
あたしはうっすらと目を開けて、視線を手の主に向けた。そこにはひとりの男性が、優しい目であたしを見詰めていた。
あたしは彼を見て、ふっと身体から全ての力が抜けてしまった。ああ、なんてあたたかくて、なんて優しい手だろう。あたしのショートボブの髪なんて撫ぜても、きっと気持ちよくなんかないはずなのに。
うっすらと開いた目で見た彼は、とても幸せそうだった。何かを手に入れた、そんな風に見えてしまった。
ああ、なんて幸せなんだろう。
こんなに大切にされることがあるなんて、嘘みたいだ。
その時、あたしの耳に掠れた歌声が届いた。それは間違いなく彼の声だ。小さな、本当に呟くような歌声だけど、それは心地よい振動となって心に響く。
大切なものを守ること、大切なことはただ、生きていくということ、泣いてしまってもいいということ、消えてしまった彼女が遺した想いと言葉、それを受け止めてそれでも愛している、そんな歌だった。
彼があたしに伝えてくれた、「どんな悪意からも守る」という決意、決意という名の愛の告白。それはあたしに届いた瞬間、あたしを包み込んでくれた。
ああ、そうだ、そうなんだ、このひとは、アキラだ。あたしを求めてくれた、あたしが大好きなひとだ。
彼の歌声が心地よくて、あたしは漣のような安らぎの中、また深い眠りに誘われる。髪を撫ぜてくれる優しい手のあたたかさは、ただあたしを全ての悪意から、守ろうとしてくれていた。