地味女が巻き込まれました。【下完】
「綾香。」
「綾香ちゃーん!」
2つの声が私を呼び止めた。
あぁ、何て懐かしいんだ。
私は声の主に視線を移す。
「お母さん、お父さん。」
昔と変わらない姿がそこにあった。
抱き着こうとしたら手で制されて
「まだ、綾香が此方に来るのは早いわ。」
何で?
って言おうとしたけれど喉に声が詰まって出す事が出来ない。
「綾香にはまだ、大切な人達が沢山待ってるだろ?」
お父さんにそう言われて頭に浮かぶ沢山の笑顔。
「だから今はまださよならよ。」
「あそこ、見えるか?」
お父さんが指を指した先には沢山の光があった。
眩しくて、暖かい沢山の光が。
「歩け、絶対振り向くな。」
私は躊躇しながらもお母さんとお父さんに背を向けて光の元へと歩きだした。
「豹にも、よろしくね。」
「綾香、愛してるよ。」
振り向かなかった。
だって零れ落ちる涙を
お母さんとお父さんに見せたく無かったから、ね。