ミルフィユと猫被り
「姉貴…!姉貴…!!」
呼ばれてはっとした。
もうとっくに番組の放送を終えたテレビがちかちかと光っている。
確かに見ていたハズの恋愛ドラマは、いつのまにか終わっていたらしい。
暗い部屋に差し込む一縷の光の先には、灯貴が立っていた。
「何……?つか入る時ノック…」
「したっつーの!返事ねぇから、入ったんだって。」
曖昧な返事をしてリモコンに手を伸ばし、テレビの電源を落とした。
ドラマを見始めた頃に付けた甘い香りのアロマキャンドルは、もう小さくなっていて部屋中に甘ったるい香りだけが残されていた。
「てゆーか、今日、夏穂ちゃんとお泊りなんぢゃないの?」
扉に手をかけてため息を吐いてる灯貴に、あたしは首を傾げながら、聞いた。