スノー・センチメンタル
「そんな雪まみれのあんたを、私の愛車に乗せろって?」

などと息巻いている私なんか何処吹く風、ゆるゆると立ち上がるその様は、何とも呑気でマイペース、心底イラッとする。


けれど、目の前に立ちポケっとこちらを眺めている少年の身体は、雪まみれなんかじゃなくて……。というか、少しも濡れていない。どういうこと?



「ちょっと、後向いて」

確かめたくてそう言うと、「へ?」なーんて、不思議そうな顔。でもすぐにヘラリと笑って言われた通り、素直に私に背を向けた。



やっぱり、濡れていない。


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