おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
 店を出た俺は、ある失敗に気付いた。有希が両手でうさ公を持つので、手を繋げないのだ。うーん、どうすっか。

 おお、いい事考えたぞ。


「有希、手を放すと迷子になっちまうからさ……」


 俺がそう言うと、有希は“イミフ”らしく、可愛らしく小首を傾けた。

 俺は有希が引っ掛けている白いダウンの前を合わせ、ホックをパチパチと嵌めて行った。


 行き交う人が変な目で俺を見てたが、誤解すんなよな。俺は女の子の服を脱がしてるんじゃない。着せてるんだ。

 そんなしょうもない言い訳を心の中で言っていたが、めちゃくちゃ恥ずかしい気持ちではあった。


 そして有希の胸元に、うさ公をそっと差し込んでやった。


「これでどうだ?」


「うん、いい感じ。赤ちゃんを抱っこしてるみたい」


「そ、そんな感じだな?」


 有希の口から“赤ちゃん”なんて言葉が飛び出し、俺は顔がカーッと熱くなるのがわかった。


「さあ、行こう?」


「うん」


 俺はフリーになった有希の手を取り、有希から顔を逸らして歩き出した。赤い顔を有希に見られないように。


< 121 / 206 >

この作品をシェア

pagetop