おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
 ああ、クソッ!

 頭を振ってみても、さっき見た光景が頭から消えてくれない。彼氏に抱き締められた、有希の姿が……


 このままどこかへ行こうかとも思ったが、行く当てもなく、たとえどこかへ行ったとしても、あの光景を忘れられそうもない。忘れるには……酒だ。酒の力を借りるしかない。


 俺は“酒”の表示のあるコンビニに寄り、ウイスキーと乾き物の肴を買い、アパートへ戻った。


 買い物した品々をドスンと乱暴に床に置き、台所からグラスを持って来てローテーブルの前であぐらをかいた。そしてウイスキーのキャップを開けて、グラスに琥珀色のウイスキーをトクトクトクと注いだ。


 酒には割と強い俺だが、ウイスキーをストレートで飲めば酔っ払うだろう。しかし、それでいい。俺は酔いたいのだから。酔ってあの光景を、いや有希への想いそのものを、断ち切りたいのだから。


 ゴクゴクゴクと、苦い液体を無理に喉に流し込むと、胸が焼けるように熱くなり、涙が出て来た。そして涙をボロボロこぼしながら、何杯も何杯も飲んだ。この涙は酒のせいなんだと、自分に言い訳をしながら。


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