おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
「どうしてそんな事するの!」


 有希に怒鳴られてしまった。でも、あまり怒られた気がしない。むしろ、もっと怒られたいような気さえする。俺って、Mだったのかな。


「だから、消毒を……」


「ふざけないで! 初めてだったのに……」


 えっ?


「初めてって……えっ? だっておまえ、彼氏に……」


「だから、逃げて来たって言ったじゃない! キスされそうになったから、逃げたのよ。バカッ!」


「う……、ごめん」


 これは怒られて喜んでる場合じゃないな。悪い事をしちまった。

 だが、有希は誰ともキスをした事がなかったのか?

 さっきのが初めて?

 なんか、すげえ嬉しいんだけど。

 なんて、喜んでる場合じゃない。有希は本気で怒っている。


「彼女がいるくせに、昼間からお酒飲んで……。おじさんもあの人達と同じよ。大っ嫌い!」


 有希はそう叫ぶと、部屋を飛び出して行った。


「有希、違うんだ。待ってくれ!」


 俺のその叫びと、ドアがガシャンと閉まる音は、同時だった。


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