おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
「なんで疑問形なんだよ?」


「なんか、言いにくくて……」


「そっか?」


 俺も苗字で呼ばれるのは変な感じがした。“おじさん”よりはマシだけども。


 俺を見上げ、クスッと笑った有希は、すごく可愛かった。だから、思わず抱き締めたくなり、勝手に手が動きそうで、それを堪えるのが大変だった。


「おやすみなさい」


「お、おお、おやすみ」


 有希は暗証キーを押し、エントランスの中に入って行った。そして、俺を振り向くと小さく手を振り、俺も手を挙げてそれに応えた。


 有希も俺も、“さよなら”は言わなかった。


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