イジワル先輩の甘い恋の魔法
「こうすれば寒くないだろ?」
私を抱きしめる黒崎先輩の腕にギュッと力が入るのがわかった。
背中に黒崎先輩の温もりが伝わってくる。
「なぁ?」
「何ですか?」
「高原は俺をいつまで先輩って呼ぶの?」
「えっ?」
「そろそろ名前で呼んで欲しいなぁ……。なぁ、姫子?」
黒崎先輩に初めて名前で呼ばれた。
しかも呼び捨て。
それだけなのに、たったそれだけの事なのに、なぜか特別な気がして嬉しくて顔が熱くなっていく。
「早く呼んでよ」
「えーっと……そんな、いきなり言われても……」
今まで黒崎先輩って呼び続けてきて、いきなり名前で呼べと言われても……。
「じゃあ、いつ呼んでくれるの?」
「…………いつか」
「いつかって、いつだよ」
黒崎先輩はそう言ってクスリと笑った。