イジワル先輩の甘い恋の魔法
「いつかは、いつかです!」
「早く呼べよ〜!」
「今は無理!」
「何でだよ〜!」
私を後ろから抱きしめていた黒崎先輩の腕の力が緩み、いきなり私の脇の下をくすぐり始めた。
「キャッ!ちょっ!や、やめて〜!」
くすぐったくて暴れる私。
くすぐるのを止めない黒崎先輩。
黒崎先輩から逃げようとした時、今度は正面から抱きしめられた。
少しだけ私を離して、私を見下ろす黒崎先輩。
黒崎先輩を見上げる私。
「早く呼べよ」
黒崎先輩は呟くように静かにそう言った。
「…………拓真、さん」
私は小さな声でそう言ったけど……。
「はっ?聞こえねぇ」
「拓真、さん……」
今度は少しだけ大きな声で名前を呼んだ。
男性を名前で呼んだ事なんてない私は、恥ずかしくて消えてしまいたいと思った。