イジワル先輩の甘い恋の魔法



黒崎先輩の車はインターを降りて、下道を走っていた。


しばらく走っていて車は海の見える駐車場に停まった。


真冬の海だというのに、とても穏やかな海から波の音が聞こえてくる。


ハンドルを抱えるような格好で、真っ直ぐ海を見ている黒崎先輩。


私は黒崎先輩の方を見たけど、黒崎先輩は前を見たままだった。



「黒崎先輩、何で……」


「俺が海を見たかったから」


「だったら別に私を連れて来なくても……」


「お前にも見せてやりたかったの」


「えっ?」



私は黒崎先輩の横顔を見た。


黒崎先輩も私の方を向く。


目が合うけど、なんか恥ずかしくて思わず目を逸らし、私は海を見た。



「なぁ、高原?」


「はい」


「仕事、いつもあんな感じなのか?」


「まぁ……」



私は俯いて、スカートをギュッと掴んだ。


笑われる。


黒崎先輩は絶対に笑う。



「辞めたら?」


「えっ?」



笑われると思っていたのに、黒崎先輩の口から意外な言葉が飛び出して、私は黒崎先輩の方を見た。




< 68 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop