イジワル先輩の甘い恋の魔法
黒崎先輩の車はインターを降りて、下道を走っていた。
しばらく走っていて車は海の見える駐車場に停まった。
真冬の海だというのに、とても穏やかな海から波の音が聞こえてくる。
ハンドルを抱えるような格好で、真っ直ぐ海を見ている黒崎先輩。
私は黒崎先輩の方を見たけど、黒崎先輩は前を見たままだった。
「黒崎先輩、何で……」
「俺が海を見たかったから」
「だったら別に私を連れて来なくても……」
「お前にも見せてやりたかったの」
「えっ?」
私は黒崎先輩の横顔を見た。
黒崎先輩も私の方を向く。
目が合うけど、なんか恥ずかしくて思わず目を逸らし、私は海を見た。
「なぁ、高原?」
「はい」
「仕事、いつもあんな感じなのか?」
「まぁ……」
私は俯いて、スカートをギュッと掴んだ。
笑われる。
黒崎先輩は絶対に笑う。
「辞めたら?」
「えっ?」
笑われると思っていたのに、黒崎先輩の口から意外な言葉が飛び出して、私は黒崎先輩の方を見た。