イジワル先輩の甘い恋の魔法
中学校の校門に着いた時、すでに前田さんが待っていた。
「おはようございます」
相変わらず素敵な笑顔の前田さん。
「お、おはようございます……遅くなって、すみません……」
私は前田さんに頭を下げた。
「いえいえ、まだ約束の時間前だから大丈夫ですよ」
前田さんはそう言って笑顔を見せてくれた。
「行きましょうか?」
「はい」
前田さんが前を歩き、私が後ろをついて歩く。
校内は木が多いのか、街中にある学校なのに蝉の鳴き声が煩いくらいだ。
校門を入ってすぐ、自転車置き場がある。
置かれている自転車は少ない。
「生徒さん、少ないんですか?」
私は前を歩いている前田さんにそう聞いた。
「今は夏休み中ですからね」
前田さんは振り返りそう言った。
「あ、そっか……」
そうだ。
今は8月。
学生は夏休み真っ只中だ。
もう学生じゃない私はそんなこと頭からすっかり抜けていた。