ピアノレッスン
1.失恋
「こちら、山根梨花さん。亜澄、僕の婚約者だよ」

もうすぐ桜が芽吹くだろうとニュースで言っていた日の午後

もうすぐランチという時間になって、サロンでとても綺麗な人を紹介された。


「亜澄ちゃん、よろしくね」

そう言って微笑む梨花さんはとても幸せそうで

視線をずらしてお兄ちゃんを見るともっと幸せそうで

でも、私は微妙な笑顔で挨拶をした。


「お姉ちゃん欲しかったので、とても嬉しいです」







嘘。


そんなの嘘だ。



張り付いた仮面のような笑顔を自ら壊してしまいたくなる。


どす黒い感情が胸の奥で渦巻いていて、私は目の前にあった紅茶をぐいっと一気に飲み込んだ。
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