ピアノレッスン
「お嬢様、亜澄お嬢様」


私は、八木澤亜澄、19歳

6歳のころ、この八木澤家に引き取られた。

もちろんお兄ちゃんの伸也さんとは血のつながりはない。

だけど、ずっとずっとお兄ちゃんのことが大好きだった。

いつかこの家を出て、お兄ちゃんとってずっと思ってた。



「お嬢様!!」


目の前でパチンと手を叩かれてハッとする。


怖い顔で私を睨んでいるのは、執事の秋月一(イチ)。

以前から八木澤家にいたようなんだけど、今年から私専属の執事になった。

そう。

八木澤家はちょっと有名なお金持ちなおうち。

最初は人がたくさんいるなと思うくらいだったんだけど

学校に行き始めてから、他のおうちとは違うと認識するようになった。


「本日はピアノのレッスンはお休みされますか?」

秋月はその表情を崩さずに淡々と言う。
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