ピアノレッスン
5.逃避行
気がつけば、私は秋月と二人で車に揺られていた。


いつもなら助手席に乗るはずの秋月が今日はなぜか隣にいる。

そして、握られた手。


そのあたたかさに、私はなんだかほっとしてしまった。


泣き疲れてうとうととし始めた頃、車はどこか敷地内に入っていった。




「お嬢様、起きてください」


そう言われ、重いまぶたを開ける。


気づけば、私は秋月の肩にもたれかかって眠ってしまっていたようだ。

慌てて、体を起こすと手の中にハンカチが握らされていた。



これ・・・秋月の・・・?


きれいに折りたたまれたハンカチはアイロンもかけられていて、片隅にAと刺繍が入っていた。
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