ピアノレッスン
「お嬢様、しばらくはこちらでお過ごしいただくことになります」

止まった車を先に降りていた秋月が私のほうの扉を開け、手を差し出した。

私は素直にその手をとり、車から降りた。




車から降りて見た建物は見たことのないものだった。

そんなに大きくもなく、高級感があるわけでもない。

だけどログハウスのような、森の中の家としてはとてもかわいいものだった。

一階にはポーチもあって、バーベキューなんかができるようになっているし、

ブラウンの外壁に真っ白な窓枠がとてもおしゃれに見えた。




「・・・ここは?」

「こちらは伸也様がご用意くださったものです」

「お兄ちゃんが・・・?」

なぜ?

私を引き離そうとしているのに、なぜこんな別荘なんか・・・

「しばらくは、私と二人きりの生活になりますので、何かと不便なこともあるかと存じますが、ご容赦くださいますよう」

そう言って、秋月が私の横で丁寧に腰を折った。
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