ピアノレッスン
え?
二人きり?
なんで?
「詳しいお話はお食事のあとに致しましょう。すぐにご用意させていただきます」
そう言って、秋月は少しだけ高くなっている入り口へと駆け上がりドアを開けてくれた。
おうちの中はお屋敷とは違って、本当に普通のおうちのようだった。
あ。
っていうのは、普通にキッチンとダイニング、リビングがつながってるって意味。
食事を用意すると言った秋月はエプロンをつけて、キッチンに立っていた。
なんだかそれがとても不思議な光景で、私はダイニングテーブルにひじをついてそれを眺めていた。
「お嬢様、そういった格好はお嬢様らしくありません」
秋月はこちらをちらりとも見ずにそう言い放つ。
でも、私もそれをスルーして質問を返した。
「ねえ、何を作っているの?」
その質問に秋月はやれやれという顔をして、ようやくこちらに視線を向けた。
「えびとトマトのクリームパスタ」
ぶっきらぼうにメニュー名だけ答えると、秋月はそのまま私に背を向けた。