ピアノレッスン
「・・・やっ」

両腕を掴まれて、ベットの上に仰向けに倒れる。

「・・・この別荘は伸也が俺にくれたものなんだ。だからここでのご主人様は俺ってわけ」

「お、お兄ちゃんが、なんで・・・」

「知らないと思うが、俺と伸也は親友なんだ。年が近かったから主従という関係を超えて何でも話すようになった」



し、知らなかった・・・

私がいるときはまるで他人のふりをしてたし、お兄ちゃんもそんな顔してなかった。



「それで、追い出されそうなお前を俺に託してきた」

「え?」



じゃあ・・・私を追い出したがってるのはお兄ちゃん、じゃないの?



お兄ちゃんに嫌われてしまったのかと思っていた私は、ほっとして思わず頬が緩んだ。


「・・・今、この状況で他の男のこと考えるなんてずいぶん余裕だな」


視線をあげると、秋月の顔は触れそうなほどの距離まで近づいていて思わず顔を背けた。


「・・・逃がすかよ」

だけど、秋月の手が私のあごを掴んで正面へと向ける。
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