ピアノレッスン
母が亡くなったことが、悲しくて悲しくて泣いてばかりいた。

そこに現れたのが旦那様だった。

一人きり、身内のいない俺を引き取り、たくさんいた使用人の息子として

八木澤家の長男・伸也と一緒に育てられた。

毎日ピアノの練習をさせられたが、伸也がいてくれることが救いだった。

それから中学にあがると、俺は使用人としてお屋敷で働くことになった。

それが旦那様への恩返しだと思ったからだ。

時折旦那様がピアノを聞きたいと俺をサロンへと連れ出した。

伸也と一緒にピアノを弾いた。

旦那様がすごいねと笑ってくれることがどんなに嬉しかったか・・・


そして、高校に進む直前、俺は執事学校に行きたいと申し出たんだ。

ピアノも合わせて海外に出て、腕を磨きたいと。

そして伸也とは分かれて、俺はイギリスへと留学した。


イギリスに留学しても伸也はマメに連絡をくれたよ。

時々、長期休暇のときにも会いに来てくれた。

本当の兄弟みたいに育った伸也は本当に俺にとって大事な友人なんだ。

そして、戻ってきたらぜひ八木澤家に仕えて欲しいと旦那様からも依頼を受けた。

俺はそれが本望だったから、素直にそれに従ったよ。
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