ピアノレッスン
お前が引き取られたことは知っていた。

だけど、使用人の俺は会わせてはもらえなかった。

伸也から話を聞いて、ずっと想像していたんだ。

お前がピアノを習っていることも知っていた。

時折盗み聞きしたこともあった。



どんな子なんだろう・・・って。

お前と一緒にピアノを弾けたら楽しいだろうなって。




そして、ようやく正式に使用人として採用されお屋敷に堂々と入ることが許された。

お前を初めて見たのは、中学の入学式の日の朝だ。

新しい制服に瞳を輝かせて、嬉しそうに笑っていた。

あの日、あの時、車の扉を開けたのが俺だったなんて

お前は覚えていないだろう?

まだ下っ端だったからな・・・



それからはよくお前の姿を見かけるようになった。

ピアノを弾いている姿も・・・



お前は可憐でとても可愛く俺の目に映った。

俺は自分の気持ちにも気づいていなかった。

ただ見ているだけでいいと思った。
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