ピアノレッスン
「倫子(ミチコ)とはね、高校時代からずっとつきあっていたんだ」


そう話すお父さんはなんだかとっても幸せそうだった。


「家の事情でね・・・私は玲子と結婚することになった。本当は玲子にも心に決めた相手がいたんだ」

「・・・え!?お母さんにも!?」

「そうだよ・・・でも結婚した時にはすでに倫子はイチを身ごもっていた。だから最低限の援助を影からすることにしたんだ」



なんだか初めて聞く話ばかりで、心がついていかない。


放心状態で聞いていると、秋月がぎゅっと私の手を握った。



「・・・だから、倫子が亡くなったとき、私はイチを引き取ることにしたんだ」

「・・・その節は本当にありがとうございました」

秋月はお父さんに向かって、頭を下げる。

「・・・何を言っているんだ。お前は正真正銘私の息子だ。頭など下げる必要はない」

秋月はその言葉に驚いたように顔をあげた。
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