彼女志願!
「蛇が女?」
「ええ」
そして穂積さんは、ついさっき買った美術書を広げ、私に見せてくれた。
彼の開いたページを見ると、確かに知恵の木からもいだ果実をイブに手渡すのは、女の顔をした蛇だった。
なんだか不気味……。
「蛇は女、なんですか?」
「女の顔をしている、だけです」
穂積さんは意味深に微笑む。
「創世記では蛇は神が創造した生き物の中で最も賢い生き物として描かれていますが、キリスト教ではその知恵は『邪悪な性質』を持つものとして描かれてきました」
「邪悪……ですか」
日本ではそんなイメージ、ないよね。
蛇の脱皮した皮をお財布に入れてたらお金貯まるとか言うし。
それはやっぱり、キリスト教をもとにした文化の違いってことなんだろうか。