彼女志願!
――――……
「――ほ、穂積さん……できれば朗読はやめていただけないでしょうか……」
「お言葉ですが先生。音読してリズムがおかしい文章は、やはり気持ちが悪いものですよ」
穂積さんは顔色一つ変えず、持っていた赤ペンで私の原稿に朱を入れていく。
ここは青天目ビルヂング八階にある
翡翠社(ひすいしゃ)キャンディ文庫編集部、打ち合わせ室。
かれこれ小一時間、羞恥プレイとも言えるような音読が続き、もはや私は余命わずかといったところ。
「――では……」
いくつかの訂正を終え、ようやく彼は顔を上げる。
「初稿の戻りは一週間後になります」
「はい」