彼女志願!





そして驚くべきことに――

いつまで続くのかと不安だった穂積さんの『溺愛ごっこ』は、あれからかれこれ二ヶ月、続いた。


もちろん現在進行形だ。



アキにも――

誰にも話していない、秘密の関係。


彼女に黙っているのは本当に申し訳ないのだけれど、やっぱり編集と作家という関係上、おおっぴらには出来ない。



そもそも穂積さんは本当に忙しいから、校了前には数週間休みがなかったり、その間は会社で寝泊まりをするハードな生活を送っているので、そうそう、会える機会もない。


実際、この二ヶ月で会えたのは片手で数えられるくらい。



私が穂積さんに会いたくてたまらなくなって、翡翠社に打ち合わせと称して行ったのと

半日休みだという穂積さんのマンションに行って、ごはんを作って一緒に食べたのと

真夜中に突然穂積さんがやってきて

「差し入れです」

とシュークリームをくれたのと……
(それでも担当作家との打ち合わせに行く途中だった)

出張に行くという穂積さんを、空港まで見送りに行っただけ。





< 207 / 648 >

この作品をシェア

pagetop