彼女志願!

そして二時間程度経ってから。

少しくたびれた様子の穂積さんが、部屋にやってきた。



「すみません。煙草臭いでしょう。シャワー貸してください」

「はい、どうぞ」



いくら禁煙が叫ばれている現代社会でも、出版社にはまだまだ喫煙者が多い。


そういう穂積さんも、実は時々、吸うんだって。

たまに彼の左手指先から香るバニラは、外国の煙草の香りだった。



「着替えここに置いておきます」



シャワーを浴びている穂積さんに一声かけて、それからキッチンに戻り、急いで作ったビーフシチューを温める。


たぶん先に、寝ちゃうような気がするけど……。



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