彼女志願!
そしてそれから数日後の週末。
日付が変わるギリギリに、穂積さんは私の部屋にやってきた。
「シャワーをお借りします」
「はい、どうぞ。その間に食事の用意をしているので、ごゆっくり」
穂積さんは私に何かをしてもらおうとかそういう感覚がないらしく、自分の脱いだスーツはきちんとブラシまでかけて、ハンガーにかける。
春らしい薄手の素材に合わせた、薄いブルーのシャツ。そしてストライプのネクタイ姿の彼は、やっぱりうっとりするくらい素敵だった。
今日は穂積さんの大好きな鴨南蛮蕎麦。
ねぎはしっかりと焦げ目がつくまで焼いて、きりりと冷やした冷酒と一緒に召し上がっていただく。
穂積さんはお酒にはめっぽう強いから、酔わせてどうこうってわけじゃないけど。
全くのシラフよりは口が軽くなるといいな、という密かな私のたくらみだった。