彼女志願!
きれいなユズさん。
化粧っけはないけれど目の縁の影が濃くて、それがとても雰囲気がある。
しっとりと咲いた朝顔みたい。
「あの、お葬式……本家のほうに行かなくてもいいんですか?」
「そんなことをしても誰も喜ばないわ」
ユズさんはうちわで顔を仰ぎながら、不思議なことを口にした。
誰も喜ばない……?
「客間にお布団を敷いて来るわね。クーラーなんてなくても、海からの風が吹いてきて、案外涼しいのよ」
そして彼女はゆっくりと立ち上がり、部屋を出て行く。
しとやかなその後ろ姿を見送りながら、妙な違和感を覚えていた。