彼女志願!
そして何が起こるわけでもなく、太陽が空のてっぺんに近づいたころ。
「今日はどうするの?」
居間で和裁をしているユズさんが、針を器用に動かしながら、問いかけてくる。
「ニーナが来るのを、ここで仕事しながら待っていていいですか?」
「ええ、いいわよ。好きにして過ごしてちょうだい」
そして、ふっとその白い顔を手元から持ち上げる。
「萌さんは東京でお仕事をなさってるの?」
「はい」
「そう。私も18までは東京にいたのよ」
「そうなんですか。ご家族の都合でこちらに?」