彼女志願!

カン――……


もう一度、煙草盆に煙管が打ち付けられる。



「では真田さん、遺言者の遺言執行をお願いいたします」



穂積さんの言葉に、それまで黙っていた弁護士さんが、改めてうなずき、遺言書を開き、すっと背筋を伸ばした。



「遺言書。遺言者、新見房江は、次の通り遺言する。


一、新見房江の財産は、長男、新見彰浩、長女、穂積弘美、そして長岡陽月の三人に、それぞれ三分の一ずつ与えるものとする。

二、村の祭祀を司る、新見家祭司、当主の采配は、孫である穂積真一に与えるものとする――……」



一瞬、水を打ったように静かになった広間は。


それから上を下への大騒ぎとなったのは、言うまでもない。



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