彼女志願!

「穂積さん。止めなくていいんですか……?」

「――」

「穂積さんっ……」



体の前で腕を組んだ穂積さんを揺さぶったその瞬間



「こんなの納得できるかい! あの娘は、長く当主の愛人をしていたんじゃぞっ!」



一人のおばあさんの発言で、今日何度目かの静寂が広間を包み込む。



えっ……


当主の愛人っ?



「――祖母のことではないですよ」



凍りついた私に、ぼそり、とささやく穂積さん。



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