彼女志願!
「なんですか?」
よく磨かれたドアハンドルに、手をかけたまま肩越しに振り返った彼に、駆け寄った。
「あの、ありがとうござます」
「なにがでしょうか」
怪訝そうに眉をひそめる彼の顔を見ると、一瞬胸の奥が冷える。
変なこと言ってしまった?
内心ドキドキしながら、彼を見上げた。
「約束です。デート。嬉しいです」
「約束がそんなに嬉しいんですか? 守られるかどうかわからないのに」
「え……」
そっか……
その可能性もあるんだ。
ぜんぜんその発想、なかった。
「だけど……私は、約束してくれたことが嬉しいです。すごく楽しみだし、ワクワクして待っていられるし……素敵なプレゼントをもらった気分です」