彼女志願!
「モエ、ちょっとちょっとっ……」
会場の隅に発見したアキが、声を潜めて私の手を引き、耳元でささやく。
「もしかしてほづみんと一緒だった?」
「一緒っていうか……」
なんと説明していいかわからず、言葉を濁していると
「見てよ、あれ」
「――ん?」
アキの指さす方向を眺めれば、穂積さんが、一人の女性に詰め寄られているところだった。
派手な赤いスリットの入ったドレスに、ゴージャスな巻髪をアップにした女性。
誰だろう……。
穂積さんの目の前に立ち、彼を指さして何かを抗議しているみたい。
そしてそんな二人を、翡翠社の偉い人たちが取り巻いていて……。
「なんだか不穏な空気だね……」