彼女志願!
「あれ、御大よ」
「えっ……! あれが白鳥紫子先生っ……?」
思わず口元を両手で押さえつつ、息を飲んだ。
白鳥先生は翡翠社キャンディ文庫の一番の売れっ子。
(ちなみに私は、キャンディ文庫の派生レーベルピンクキャンディ文庫でちょっとえっちな小説を書いている)
翡翠社を二十年も支え続けてきた少女小説家の大家だ。
十代でデビューしたはずだから、三十代後半なはず。
先生のパーティーに参加しておいて言うのもなんだけど、雲の上の人だって思ってたから、ああやって存在している先生を見ると、なんだか不思議な気持ちになるけど……。
「だけどなんで穂積さん、詰め寄られてるの……? 御大のお気に入りだって言ってなかった?」
はらはらしながら問いかけると
「乾杯の挨拶の時にいなかったから」
「――」
アキの言葉に絶句した。