彼女志願!
クラッチバッグからデジカメを取り出し、会場内に飾ってある花瓶や、グラスを写真におさめる。
ドアや壁紙だって、シックな中にアカデミックさも感じられて、とてもすてきだ。
帰ったらどういう建築様式なのか、調べてみよう。
「鴻上先生」
ドアを出たところで、男の人に呼び止められた。
振り返ると、挨拶に行ったときに穂積さんと話していた営業さんだった。
年はたぶん穂積さんと同じくらいか、下だと思う。
名前はえっと……
「松田です。先生」
さらさらの茶色い髪と、少しつり目ぎみのきれいなカーブを描いたアーモンドアイが、好奇心いっぱいに輝いた。
「松田さん」
「写真、撮ってあげましょうか?」
彼は私に向かって手を伸ばす。