春の頃に思いだして。
――太い並木の古桜。何でも知ってるおじいさん。
(奇妙な高揚感を感じる――妖魅か?)
彼女は素早く視線を左右に走らせたが、この木のほかに、それらしいものが見つからなかったのだ。
「おや……」
妖魅ではなかったが、異様さの元はみつけた。
彼女はふと、思っていた。
これが今の自分に、なんの災厄をもたらすものか。
妖魅縛師として、どう働くか。
そもそもこれはなんだろう。強いのか? 弱いのか?
気配が全くしなかった。
背が高くて、大きくて。いうなれば花によりそう、黒い影。
(とるに足らない生き物がいた。生きているのか、いないのか。全く、禍々しい邪念を感じない)
通り過ぎる人の表情を見て、やっとわかる。これは生きてはいないのだと。
わからなければいけない。魑魅魍魎の類なれば。
臭気。異様な――気付かないはずは、ない。
(奇妙な高揚感を感じる――妖魅か?)
彼女は素早く視線を左右に走らせたが、この木のほかに、それらしいものが見つからなかったのだ。
「おや……」
妖魅ではなかったが、異様さの元はみつけた。
彼女はふと、思っていた。
これが今の自分に、なんの災厄をもたらすものか。
妖魅縛師として、どう働くか。
そもそもこれはなんだろう。強いのか? 弱いのか?
気配が全くしなかった。
背が高くて、大きくて。いうなれば花によりそう、黒い影。
(とるに足らない生き物がいた。生きているのか、いないのか。全く、禍々しい邪念を感じない)
通り過ぎる人の表情を見て、やっとわかる。これは生きてはいないのだと。
わからなければいけない。魑魅魍魎の類なれば。
臭気。異様な――気付かないはずは、ない。