ガルドラ龍神伝―外伝章―
「一言じゃ言えないけど……。


まあ、冷静で気高い魔族さ。


頑固な所もあるから、私の意見はほとんどスルーされがちだけどね」


リタは照れながら答えた。


その時の彼女の顔は、どこか寂しそうだった。


養成学校の門から三十メートル先まで来た時、リタは謎の声を聴きとった。


その声は、男のようだ。


『誰か……。


この像に、砂属性の石を……。


俺を助けてくれ』


リタは辺りを見回す。


が、どこにも石像らしき物はない。


彼女は、きっと空耳だなと思い、グラナダの所に戻った。


が、彼女の耳に、またあの声が聴こえてきた。


「グラナダ」


「どうしたんだ、リタ?」


「何か、男の声がしないか?


耳を澄まして、聞いてみてよ」


リタに催促され、グラナダは耳を澄ます。


すると、彼にもあの声が聴こえた。


「確かに、君の言う通りだ。


早速、声のする方向に行ってみよう」


二人は、遠くから聞こえる声を頼りに、石像のある方に向かう。


彼女達が通っていた道路付近の叢を掻き分けた所に、緑色の石像があった。


「これは、魔族像だな。


人間界にもあるんだね」


「リタ、詳しいね」


「当たり前だよ、私も魔族なんだからさ。


特別な儀式のために使われる物と、魔族を封印するために使う物とがある」


「ということは、この石像に魔族が封じられている可能性は大きいね」


グラナダの言葉を聞き、リタははっとした。


「グラナダ、あなたは冴えてるよ。


この封印を解いてあげよう」


「ああ、もちろん。


えーと、砂のゼフェルは……。


えーと……えーと……」


「もしかして、どこにしまったか、忘れちゃったの?」


グラナダはリタの言葉を遮るように、鞄を探る。
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