■□ムーンライトエクスプレス□■
久しぶりに星が見えた気がした。
 
「嬢ちゃんは何で死のうとしたんだ?」
 
マンドラゴラが尋ねてくる。
 
「いろいろあるんですよ。青春、みたいな?」
 
ぶっきらぼうに答える。疑問形なところがなんとなく情けない。
 
「いろいろかぁ……俺はうらやましいけどな。抜かれたら30分で死ぬからさ」
 
「じゃあ伝説になれないじゃないですか」
 
沈黙。
 
「ホントだな」
 
豪快に笑うマンドラゴラ。変わった植物。
 
「すいません。抜いちゃって」
 
「あー、いいって。すげぇ嬉しかったし、なんか気持ち良かった」
 
「…………………」
 
再び沈黙。星だけが瞬く。静かな夜。
 
「あっ……でも」
 
心が自然に言葉を紡ぐ。
 
「全然、伝説にはなれてないけど、気のせいかもしれないけど、今、なんか生きてもいいかな……とか、思いました」
 
返事はなく、確認してみると、マンドラゴラは死んでいた。
笑ってるのか苦しんでいるのかもわからない、変な顔。
 
「……まだ15分しかたってないじゃん」
 
当然、返事はなかった。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私はマンドラゴラの死体を家に持ち帰り、細かく刻んで全て口にいれた。
 
 
死ぬほど苦かった。
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