【夢は追うもんだ、何が夢だ、夢があったっていいじゃないか、夢は平等だ】
「妖精、さがしてるんでしょ?」
 
 机の上で眠りという名のダークサイドに堕ちようとしていた私に声をかけてきたのは悪魔ちゃんでした。
 もちろん、悪魔じゃなくてただの人間の悪魔ちゃん。
 ようするに、ニックネームですよ。
 
 悪魔ちゃんはクラスでも飛び抜けて暗い性の人間で、小学生には不釣り合いな知識と身体(私は酷く嫉妬したものです)を有しておりました。
 黙っていれば美少女なのですが、青白い顔と黒く艶やかで長すぎる髪の毛と余りにも黙り過ぎるおかげで、小学生の感性からしたらやはり「悪魔ちゃん」だとか「さだこちゃん」だとかいう二つ名がつくのは致し方ない――といった人間で、まとめちまえば『暗い変人』だったわけです。
 
 そんな悪魔ちゃんが急に図星をついてきたのですから、私としては真っ先にごまかしに入るのは至極当然の流れだったのですが、
 
「うそ。見てればわかる」
 
と悪魔ちゃんに押し切られたらもう白状するしかないってものです。
 ええ、そうです。実は捜してるんですよ妖精さんとやらを。
 
「ふーん……」と唸り頭の上から爪先まで私をしっかりと視姦した悪魔ちゃんは、ジワジワとヒいていた私に次の瞬間信じられない言葉を紡いできやがりました。
 
「妖精が居た場所――教えてあげようか?」
 
 耳を疑いましたよ。
 悪魔ちゃ――もとい■■ちゃんは妖精さんを見たのですか!?
 
「みたよ?だから教えてあげようか?って」
 
 当時の私は飛び上がりましたね。だってまさか目撃した人がいるなんて思ってもみませんでしたから。怪しいなんて欠片も思わず「悪魔ちゃんは実は天使だったんですね!」なんて思ったりしました。情けない。
 
 何ということもない。彼女は悪魔でも天使でもなく、ただの化け物だったのです。
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop