【夢は追うもんだ、何が夢だ、夢があったっていいじゃないか、夢は平等だ】
今の私ならともかく、幼くピュアな心しか持ち合わせていなかった時代の私は、やたら満足気に悪魔ちゃんの後ろをノコノコとついていきました。きっと既に妖精さんを見た気になっていたのでしょう。
 上機嫌のあまり、無言で目の前をスタスタと足早に歩く悪魔ちゃんに話かけてしまいました。
 
 あく――■■ちゃんはどんな願い事をしたんですか?
 
「願い事?」
 
 妖精さんにする願い事ですよ?何でも叶うんでしょう?
 
「へー」
 
 へーって……知らなかったんですか!?
 
「うん」
 
 じゃあ願い事は?
 
「してないね」
 
 ……なんと。
 後にも先にもこれほど勿体ない!と感じたのはこれが最後でした。
 
「星野さんはどんな願い事をしたいの?」
 
 それはですねー……もう少し胸を張れるような身体になりたいのですよ。ボンって。キュッて。スラッ!みたいな。
 
「ふーん……星野さんはそのままでいいと思うけど。まだ小学生だし」
 
 むむ……それは悪魔ちゃんだから言えるのですよ。ふくよかな身体を持つ姉を日常的に見ながら生活している私からしたらいろいろと思う所もありましてですね――ってすいません。ナチュラルに‘悪魔ちゃん’とか言っちゃいましたごめんなさい。
 
「いいよ。私、悪魔ちゃんって嫌いじゃないから」
 
 クスっと笑う悪魔ちゃんは今思い出しても小学生離れした色気があり、激しく敗北感を感じてしまいました。
 
 
 
 ええ、今の私が。
 畜生が。
 
 
 
 そんなこんなで辿り着いたのは体育倉庫でした。
 確かに私が捜してない場所でしたが、普段から体育の授業で中は見てます。その時は妖精さんなんていませんでした。
 悪魔ちゃん、ホントにここで見たんですか?
 
「うん。この中にいたよ」
 
 うーむ……妖精さんとはファンシーな生き物だと思って花畑とか池とかを捜していた私はとんだ勘違い野郎だったというわけですか。意外にインドアというか、なのにエネルギッシュというか。
 

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