君に贈る
しばらくして琉生はそっと離れた


「琉生?」


「沙菜‥」


琉生は私を見て目を逸らした


今日はみんな様子がおかしい


何で?


「琉生、上がって」


私は琉生の手を引いて自分の部屋に入れた


琉生のコーヒーを淹れソファに並んで座る


琉生はコーヒーを手にしたまま止まった


私は琉生を見ながら自分もコーヒーを飲んだ


何を話していいかわからなくて互いに無言になる


何か話さなきゃって思えば思うほど何もでてこない


そのとき携帯が鳴った


「ごめん」


私は携帯を手にリビングを出た


「もしもし」


「沙菜、今度の連休空いてる?」


「うん」


むしろ連休に裕を誘う予定だったし


「お客さんにさ、温泉旅行のチケットもらってさ」


「マジ?」


「マジ、お客さん用事で行けなくなったからってくれたんだ」


私は小さくガッツポーズをした


「いいねぇ」


「じゃあ、その予定で」


「うん」


電話を切りリビングに戻る
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