君に贈る
「愛理ちゃん、大丈夫」


「‥え?」


「過去には戻れないけど、今からやり直せばいいんだよ」


「…」


今から‥やり直す?


「どうして未来があるのか知ってる?」


私は首を横に振った


「人生やり直すことができるからだよ。誰だってね」


人生やり直すことができる‥


「失敗だって、成功のうちだからね」


「え?」


「だってさ、失敗しないと、気付かないことって沢山あるからさ」


失敗しないと、気付かないこと‥


「ある患者さんの話。15歳のとき、ある日母親と大喧嘩した。その日彼は家に帰らなかったんだ。」


孝雄は私を真っ直ぐ見つめた


「でも翌日、帰ってみると母親は帰らぬ人になってた」


「えっ‥」


「もともと心臓が悪くて。心臓発作だったんだ」


私は目頭が熱くなった


「彼は父親を責めた。どうして母親を見てなかったんだよって」


私は生唾を飲み込んだ


「でも、母親は彼が家を出てすぐに息を引き取ったんだ」


「っ」
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