君に贈る
「彼は後悔した。家を飛び出したこと」


「…」


「母親との喧嘩も、父親を責めたことも」


私は思わず目を逸らした


自分と被るとこがあるから


「何度も自分を責めた」


私と同じような感情を抱く人がいるんだ‥


「それで彼は自分を捨てようとした」


「っ」


「でも恐くてできなかったんだ‥」


私は孝雄を見た


それってもしかして‥


「どうやって‥立ち直ったの?」


「そのとき彼は思ったんだ。過去に戻りたいと。でもそれはできないから、今からやり直せばいい」


「…」


「それから彼は父親を大事にし始めた。それが母親への罪の償いだと思って」


罪の償い‥


「自分を捨てることが罪の償いじゃないって気づいたことがよかったんだよ」


「…」


「彼は一人じゃないから立ち直れたんだ。人は独りじゃ生きてけない。昔の人は偉いと思うよ、本当」


孝雄はそう言って笑った


「愛理ちゃん、俺は愛理ちゃんを救いたい」


私は堪えてた涙を流した
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