君に贈る
その日の夜、私は尚吾と居酒屋にいた


「「かんぱーい」」


久しぶりに会った尚吾は前よりずっと大人っぽくなっていた


「で、沙菜男探してんの?」


「私じゃないよ~」


「照れんな照れんな、いい男紹介してやるから」


「本当に!?」


「やっぱお前だろ」


「違うって!私もうすぐ結婚するの」


「マジ?」


「マジ」


へぇと頷きながらビールを飲む尚吾


「おめでと」


「どうも」


「どんな奴?」


「かっこよくて、背が高くて、2つ上の社長さんで、優しくて、引っ張ってくれて、でも甘えるとこもあって‥」


私は指を折りながら答える


「あぁ、惚気はもういい」


「尚吾が言わせたんじゃん」


「‥男紹介してほしいのは沙菜の友達?」


「ううん、琉生にべったりの女の子」


ちょっとイラッとするんだ


琉生は大丈夫って思ってるけど


どうしてもやっぱり‥ね


「へぇ。どんな子?」


「話したことはないけど、見た目は可愛い感じ」


「何系?」


何系?


う~ん‥


「姫系?」


「フッ。ピンクのフリフリとか着てんの?」


「うん!まさにそれ」


「沙菜の友達にはなりそうにないタイプだな」


「まぁね」


ブリッ娘苦手だし


「了解。ツレあたってみるわ」


「うん、よろしく」


「なぁ、裕のことだけど‥」


「っ‥何?」


尚吾は真剣な顔になる


思わず私も


「俺裕のお母さんに預かってるもんがあって」


「何?」


尚吾はA4のノートを出した


「見てみ」


私は尚吾を見た後ノートを広げた


「っ‥」


「アイツ器用すぎだよな」


ノートにはぎっしり写真が貼ってある


一枚ずつじゃなく、人の形に切ったものや、いろんな形に切ったものをうまく貼り合わせて


その写真のほとんどが私との写真で


「裕のお母さんは俺にってくれたんだけど‥最後のページ見てみ」


私は言われた通り最後のページを開く


「っ‥」


最後のページは私しかいない


目頭が熱くなる


「お前が持ってる方が、裕は幸せだろ」


「っ‥裕っ‥」


ごめんね‥


こんなに私のこと想ってくれて、ありがとう


ありがとう


尚吾は黙ってお酒を飲む


私はノートを握りしめた


裕‥


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