君に贈る
私は何も言わず悟の話を聞いた


「もう沙菜は前に進んでて、俺だけ過去に囚われてさ」


「…」


「千葉で言われた一言に目が覚めた」


何て言ったっけ?


もう悟に気持ちはないだっけ?


「俺は元カノ全てが自分のもんって勘違いしてたのかもな」


「…」


「そんなわけないのにな」


悟、何が言いたいの?


「でも、本気で好きだったのは沙菜だけだった」


私はそっと起き上がり悟を見た


「これ本当だから」


悟は全て吹っ切れた顔で言った


ありがと、悟


「あのとき浮気してなかったら、今頃沙菜と結婚式を目前に控えてたかもな」


と笑いながら言った


「ホントにね」


「…」


黙り込む悟に思わず吹き出してしまった


「笑うなよ」


いつの間にか涙は止まっていた


「好きだから不安になんだよな」


「悟?」


「沙菜は本当に琉生でいいのかってな」


そう言って思いっきり歯を見せて笑う悟


「何それ」


「今ならまだ間に合うぞ、沙菜」
< 310 / 418 >

この作品をシェア

pagetop