君に贈る
小声で俺を呼ぶ結衣


俺はどこを見るわけでもなく耳を傾けた


「触って」


そう言って俺の手を結衣の太ももに置いた


俺は反射的に手を引く


「琉生、ちょっとでいいから」


映画館だぞ、ここ


それにそういうことする気もない


俺は出ようと立ち上がろうとした


でも結衣に阻止される


「琉生、おばあ様に言うわよ」


いきなり真面目な声になる結衣


「琉生が襲ってきたって」


「…」


俺は結衣を見た


結衣はクスッと笑った


「言うこと聞くのね」


そう言って俺の手は結衣の足を撫でる


妙に心臓が暴れる


俺は館内を見渡した


館内には数人しかいない


俺らは最後尾


見られることはないだろう


でも・・
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