ふたつ星
その声に体がビクッと反応し、足が止まる。
ゆっくりとその声が聞こえてきた方に振り返る。
「……っ!」
その瞬間、河原に座っている一人の青年と目が合った。
ハッと息を呑むくらいキレイな青年が私をジッと見つめている。
目が離したいのに離せない。
彼の真っ直ぐな瞳が私を射抜いている。
どれ位の時間が2人の間に流れただろう。
その静寂を破ったのは彼だった。
「ここで死なれたら迷惑なんだけど。俺の場所だから」
眉を寄せ不機嫌そうな低い声で言われ、また涙が込み上げてきた。
私がゆっくりと川から出たのを見届けると、彼は寝転がって空を仰ぐ。
川を後にしようと彼の横を通りすぎた時、彼の声が確かに聞こえた。
「辛いばっかの人生なんか無い」