ふたつ星
とっさに振り返ると、彼は目をつむって眠っているようだった。
まるで何も無かったように、何も言っていないという風に。
でも、彼の声はちゃんと私に届いた。
私は彼にペコリと頭を下げて走り出した。
今流れている涙は絶望からじゃない。
冷え切った心の奥底に、温かい光が芽生えたんだ。
私は涙を拭うこともせずに走った。
生きたい。
生きたい。
私は本当は生きたかったんだ。
今の私がどんなに絶望的でも。
それでも希望を持ちたかったんだ。
私は冷たい風を全身で切りながら走った。